スタディーツアーを終えて 大阪大学1回生 板倉 美聡

まさに「今」発展している国なのだ。というのが、11日間の旅を
振り返る私にとってのインドを、最も端的に表した言葉である。
 
初めてムンバイについた日の夜のことは忘れられない。10時間ものフライトを終えて疲れきったバスの中、窓から飛びこんでくる見たことの無い世界に夢中になった。互いに押し合いへし合うように並んだ店の数々、そこら中で寝ている人々、やせほそった野犬たち・・・。
ムンバイという都市は、そこに生きる人々の鼓動が聞こえてきそうである。
4人家族で600人もの召使を抱える一家と、アジア最大のスラム街で生活する何万もの人々が、そして物乞いを仕事として強く生きる子ども達と、清楚な制服を着て学校に通う子ども達が共に生きている。町にはごみが溢れ、野犬が闊歩し、信号もほとんどなく、おびただしい数の人々と車が混在している。しかし格差も貧困もごみも野犬も、すべて人間の生活が営まれれば、それに付随して発生するものであって、それゆえに人間の営みの一部とすら言えるのではないだろうか。

ムンバイという町は、そういったもののすべてを受け容れて成り立っているからこそ、混沌に満ちた、生きている町なのだと私は感じた。デリーやアグラの無機質な町並みは、それとまさに対照的だった。観光都市として、国際社会に向けて取り繕ったかのようなその景色は、私の知っている世界と重なる物があった。整備された道路や空港、豪華なホテル…。しかし、ところどころ工事中らしい殺風景が広がっていたりと、その都市はまさに「先進国の首都」として形作られている途中なのだと感じられた。美しい芝生の公園を見るたびに、昔この場所にはどんな景色があったのだろうか、どんな人々の生活があったのだろうかと、見たことの無い過去に思いをはせずにはいられなかった。
 
インドで感じたことはそれだけではない。最後の夕食でも口にしたように、この11日間の旅で、私はもっと人間のことが好きになった。教室の子ども達が、「ディディ!ディディ!」と、無邪気に私を呼ぶ声や、別れ際に「ピルミレンゲ!」と、小さな体で力いっぱい叫んでくれた
言葉が今でも耳から離れない。
気づけば行きつけのお店となっていた、町のお菓子屋さんのおじいちゃんは、ほとんど言葉は交わさなくても、私が幸せいっぱいでお菓子を頬張るのをいつも嬉しそうにみつめていた。
早朝のムンバイのグランドで出会ったフットサルチームのコーチは、「もっとパスを回すんだ!」
と偉そうに指示しながら、自分はゴール前でひたすらシュートを狙うだけの困ったおじさんだったが、ホテルに帰ろうとする私達をいつも「あと5分だけ!」と全力で引き止め、最後の日には
「今週末飲もうぜ!」と無理やり誘ってくる、強引で温かい人だった。
最終日に出会った物乞いの子ども達の「おなかすいたよぅ・・・」という迫真の演技、思わず差し出した私の100ルピー札を握り締めて狂喜乱舞するその姿に、たくましい「生きる力」を感じた。他にも、二階の踊り場でおしゃべりに興じるホテルプラザの従業員や、手を合わせて
「ナマステ!」と言いさえすれば、笑顔で応じてくれる道行く人々、そしてもちろん、大好きなツアーの仲間達・・・。この旅で、貧困や幸せの意味を考えさせられ、自分の将来の夢に疑問を持ったりする瞬間も数多くあったが、それでも、やはり自分は人のために働きたいと、そう強く感じた。この先私は社会に出て、人間の汚いところをたくさん見るかもしれない。しかし、それでも、この「人間が好き」だという感情が根幹にあれば、私は将来、自分のしたい仕事を強くやり抜いていける気がする。
 
「今」この時も、インドは発展していっている。デリーやアグラは町中が綺麗に取り繕われ、ムンバイのスラム街は15年以内に住宅街へと変貌する予定である。それはある意味、「日本化」に等しい。この旅で、日本が美しいのはムンバイが受け容れてきた汚い部分をすべて排除してきたからではないかと感じた。公私の境界がはっきり引かれ、秩序で貫かれるのと同時に、人と人の繋がりも分断されてしまっている日本。公共物である橋に洗濯物が干され、道路で体を洗う人々が見られるほど、公私の境界があいまいで人々が同じ混沌のなかに生きているインド。いつかまた、この国を訪れた時、発展の過程で日本が失ってきたものがこの場所にあり続けることを願ってやまない。

  1. 2012/11/06(火) 10:01:48|
  2. 2012年9月ツアー感想文
  3. | Trackbacks:0
  4. | Comments:0
<<スタディツアーに参加して 大阪大学2回生 山口 直樹 | HOME | If I find it, I will practis it. 悟ったことは、実践する! 関西学院大学1回生 齋藤 未歩>>

Comments

Post a comment


Only the blog author may view the comment.